内臓に見る年魚アユの気高さ

昨日からアユの耳石摘出前の測定をしており,生殖腺重量も計っている.これらのアユは,昨年の産卵期(9月下旬~12月中旬)に獲ったものなのでメスはみな卵を持っているのだが,それを見ていると年魚アユの凄みを感じる.

腹がパンパンに膨れているメスのお腹にはぎっしり卵が詰まっている.卵の占有率はほぼ100%かと思うほどだ.しかし当然,内臓器官もある.卵を慎重に取り出そうとすると,卵に挟まれた,かぼそい管が出てくる.これは腸だ.腸を辿った先に胃もあるが,部屋の隅にうずくまっているかのように存在感が薄い.もはや餌を食べない産卵期のアユ.胃も腸も役目は終えているのだ.最後のエネルギーのすべては卵に注がれている.

もう自分自身が生き残ることを前提としない,子孫を残すためだけの体の変化.それはアユの生態に織り込まれた現象と言えばそれまでだが,ここに,年魚アユの気高さを感じずにはいられない.