新興学術プラットフォーム「Qeios」に査読を掲載し(てみ)ました!

信頼ある学術誌からの査読依頼だけでなく,いわゆるハゲタカ的な怪しい雑誌からも,しばしば査読依頼が届く昨今.後者の場合,ほぼ反射的にお断りするケースがほとんどなわけですが,先日届いた「Qeios(2019~)」からの依頼は,目に留まりました.

この「意外づくし」の査読の説明に,「怪しさ」よりも「興味」が湧きました.

何よりも,通常はボランティア・匿名で何の証も残らない「査読」にDOIが付き,論文と同様に記録されることは,「査読疲れ」にある研究者の心をくすぐります.しかし同時に,それは他人様(の論文)を評価したコメントとともに査読者自身も公に曝されるという恐ろしいシステムでもあるわけです.すなわち,低レベルなコメントを書けば,世界から「あいつは当てにならない」と密かに評価されてしまう可能性もある.しかも,それが永遠にWEB上に残る.査読にあたっては,末代までの恥とならぬようコメントしなければならないというプレッシャーがかかるわけです!(大袈裟に言えば…)

ちなみに,Qeiosは高額な掲載費用は必要なく,明らかに金儲け主義のハゲタカではないです.

「査読コメントにDOIが付く」,「査読者名・コメント完全オープン」というのは,このQeiosの大きな特徴ではありますが,趣旨自体はプレプリント(査読前論文)そのものです.つまり,査読前の論文をオープンアクセスプラットフォームに登録・公開し,迅速にクレジットを確立しつつ,他の研究者からフィードバックをもらう,ということ.

その姿勢は,以下の査読ポリシーにも表れています.

こうしてプレプリントとして投稿されDOI付きで公開された論文は,査読コメントを参考に,自由に何度でもアップデートできます.アップデート版に対して,また査読コメントを付けることも可能ですし,別の人が査読コメントを出してくることもある.こうして,ブラッシュアップしていった論文を,その後どこかの学術誌に投稿していいわけです.プレプリントだから.

さて,このプラットフォームは,今後どのように世の中に受け入れられていくのでしょうか.やりとりが限定された伝統的な査読よりも,「論文を介した,少し気楽な議論の場」として,今時な有効活用法があるのかもしれません.

私の査読はコチラです(おそろしや~).著者からの返答と,それに対する私の返答も付いています.(2024年3月17日現在)