7つの瀬張網漁場・漁師の協力を得た「落ちアユ」論文が,Fisheries Science誌のオンラインで公開されました!

受理のお知らせをしていた論文がオンラインで公開されました.

産卵のために川を下る「落ちアユ」が,「水温の低下+川の増水」というダブルトリガーによって移動する様子を,長良川における落ちアユ漁「瀬張り網漁」の漁獲データを用いて明らかにしました.

水温が日平均18℃を下回ると,川が増水する度に次々と上流からアユが下ってきていました.その様子は,まるで雨で駆動するベルトコンベアに乗ってアユが下流へと運ばれてくるようでした.山間部まで広くアユが分布できる長良川だからこそ,しつこく上流から下流へと産卵親魚が供給され,産卵が長く続くと考えられます.

過去の記録と比較すると,このアユの産卵降河行動は,ここ半世紀ほどの間に約1カ月ほど遅れていることも分かりました.「昔に比べて,アユがなかなか下ってこなくなった」という漁師の声は正しかったのです.温暖化の影響で,秋になっても水温がなかなか下がらないことが原因だと考えられます.

論文に使用した落ちアユや水温のデータは,漁協・漁師さんらの協力を得て取得しました.それによって,アユの生態だけでなくアユ漁に対する温暖化の影響も明らかになりました.アユの行動パターンの変化に対し漁業をどう適応させていくか?いわゆる「温暖化への適応策」を,今後,漁師さんら(ステークホルダー)とともに考える良いきっかけになったと思います.

Nagayama S, Fujii R, Harada M, Sueyoshi M (online) Low water temperature and increased discharge trigger downstream spawning migration of ayu Plecoglossus altivelis. Fisheries Science.