12月のアユの中

昨年の秋に確保していた産卵期のアユ.その中でも最末期の12月17日に長良川本川で採捕したメスのアユのお腹を開きました.(耳石摘出前の生殖腺重量の測定のためです)

9月下旬~11月のメスには卵がビッシリ詰まっていたわけですが,今や見る影もありません.もう卵をほぼ出し切り,カスだけが残っているような状態です.あとは天に召されるのを待つばかり.最末期のアユに,壮絶な命の営みを感じます.

「アユは,最後,全エネルギーを産卵に向けて,内臓さえも溶けてしまう」とよく言われます.

たしかに,上の写真でも内臓が溶けているように見えますが,この言い方は正確ではないようです.正しくは,「採捕されて死んだ後すぐに溶けてしまうほど,内臓(特に腸管)が細く薄くなっている」ようです.写真のアユも,とろーりとした腸管が,ちゃんとお尻の穴まで繋がっていました.

一方,12月も中旬だというのに,まだやる気満々のアユもいました!

オスは白子が詰まってます.メスはすでに1回産んでいると思われますが,まだ産卵しそうです.つまり,12月17日以降も,長良川ではアユが産卵していることを示唆します.実際,アユの耳石から孵化日を推定すると1月生まれもいますし,岐阜県水産研究所の調査では2月生まれと推定されるアユも報告されていますから,12月に産卵していてもまったく不思議ではないのです.

「12月のアユなんて初めて釣ったなぁ」とは,このアユをガリで掛けてくれたベテラン漁師の言葉.あまり気にも留められない12月のアユでした.