私のあゆみ

●悠久の時に命をつなぐ野生のイワナに憧れて,山奥に分け入るスキルを身につけようと入部した高校山岳部(仙台市).なんとなく文系に進んでしまい,このままじゃダメだと理転した高校3年生.「山は海の恋人」だと,どうにか滑り込んだ北海道大学水産学部.やっぱり俺は海じゃない,山河だ!と原点回帰で辿り着いた北海道大学農学研究院.

●山,川,魚・・・キーワードはあれど何をどう研究すればいいのか「研究デザイン」を描けず泥沼にハマる.それでも,何とかもがいて,サクラマス(ヤマメ)をはじめとした魚類群集の生息環境と河川整備との関係,ならびに保全・再生手法などに関する研究を遂行.晴れて博士号(農学)を取得するが,「トマトもまともに栽培できない農学博士」なんて揶揄される.専門と博士号のミスマッチ感は未だ否めない.大学院5年半の「もがき」は,私の研究者としての土台をつくる.

●大学院修了後,9年弱,(国研)土木研究所自然共生研究センター(岐阜県)に勤務し,大河川下流域の氾濫原研究を推進.容赦のない陽射しに,北国育ちで透き通っていた肌もシミつく.その後3年間,株式会社建設環境研究所と岐阜大学を兼任.民間の荒波と,アカデミックのうねりを体感する.現在,岐阜大学地域環境変動適応研究センターに特任教員として常勤.主に長良川のアユの生態と温暖化影響・適応策の研究を推進中.またアユの知られざる真実を解明しようと画策中.

※詳しいプロフィール,論文,社会活動などはコチラを参照.

●常に,多くの方々に支えられ研究を継続できていることに感謝の言葉しかございません.

専門と研究視野

私の専門は『河川生態学』です.生態学は「生き物」と「それを取り巻く環境」―すなわち「生態系」を扱う研究分野です.特に,川に関する領域が河川生態学です.同時に私の専門は「応用生態工学」でもあります.現代において無視できない人為的な影響を含め,生態系の保全や管理を考える分野です.それらの専門をベースに,流域環境全体を俯瞰する「流域保全学」を目指します.

近代・現代は,開発や治水・利水の工事によって大きく川の環境を損ない,知らぬ間に多くの生物,そして当たり前に享受していたはずの自然からの恵み(生態系サービス)を手放してきました.近年では,温暖化による水温上昇や豪雨の激化も,それに拍車をかけている側面があります.

様々な社会的制約や抗えない温暖化という課題に直面するなか,いかに川の生態系を保全し,川の恵みを享受し,いかに川とともにある社会を形成していくのか?山・森・農地・都市・川を含む流域視点で,生態系の保全・再生に資する研究に取り組んでいます.

●巨大スッポンとの格闘(揖斐川にて)
――高級食材として名高いスッポン.自然界で目にする機会は,普通あまりない.でもヤツらは,流れがよどむ川底で,砂泥の布団を被って,今でも確かに生きている.周辺に生えた水草はスッポンの隠れ家でもあり,小魚などが豊富なエサ場でもある.水はもちろん砂・泥も,水草や小魚が育つための栄養もまた,流域のどこからかやってきたものだ.それを食べ・利用して生きるスッポン.川のあらゆる生き物には,流域が詰まっている.